HOME > プレスリリース > 2016 > 画像処理を用い、スポーツウェアなどに多用される 経編(たてあみ)ニットの欠陥検出を自動化することに成功
画像処理を用い、スポーツウェアなどに多用される 経編(たてあみ)ニットの欠陥検出を自動化することに成功
東京都市大学知識工学部(東京都世田谷区)包 躍(ばお ゆえ)教授、富山県立大学工学部(富山県射水市)中田 崇行准教授、城西ニット有限会社(富山県南砺市〔1〕、取締役社長:荒木 貢)らの研究チームは、これまで困難だった、生産現場における複雑な立体構造を有する経編(たてあみ)ニット(※1)のオンライン検査・欠陥検出に成功しました。現在、関連企業がシステムの実用化を進めています。
なお、本研究成果は計測自動制御学会論文集(2017年2月号)に掲載されました。
〔1〕富山県南砺市…経編ニットの生産量で日本一のシェアを誇る
ポイント
- 布模様の周期を、1次元離散フーリエ変換(※2)によって抽出することで、製造中の経編ニットの模様に最適な欠陥検出フィルタの自動作成を実現しました
- 欠陥検出フィルタを用いた経編ニットの欠陥有無判定に、正規分布(※3)と発生確率の概念を導入することで、欠陥判定基準の自動設定を可能にしました
- 織機に設置したカメラ画像の織り目模様から、布の傾きを自動検出し、その傾きに対応した自動欠陥検出を可能にしました
概要
布織物製品の工場では、生産効率向上のため、欠陥を自動検出するシステムが必要とされています。しかし、スポーツウェア等で多用される経編ニットは、構造が立体的で複雑なため、レーザー照射等の既存方法では欠陥を検出することが困難でした。
そこで本研究では、2種類のフィルタを開発して、画像処理による経編ニットの欠陥検出法を考案し、検査の全自動化を可能にしました。
まず、布織機上部に設置したCCDカメラ(図1)により、流れる布を撮影します。この際、布の端部は織られた直後、わずかに収縮し布が傾く場合があるため、画像中の経編ニットの織り目模様を画像処理で抽出し、傾き角を算出することで布の傾きを補正します。
次に、傾き補正済の画像にて、織り目模様の周期を一次元離散フーリエ変換によって抽出し、検査中の経編ニットに最適なブロック幅を算出、画像処理で用いる欠陥検出のためのフィルタを自動的に作成します。(図2)
最後に、図3に示すように、連続して撮影された複数の画像データから得られた2種類のフィルタ出力値の分布傾向を正規分布と比較することで、手動による閾値設定を行わずに欠陥の有無を自動判定します。
図1 布織機とCCDカメラ
(城西ニット有限会社提供)
図2 欠陥検出フィルタの自動作成
図3
背景
布のような織物製品では、製造時に布織機に取り込まれる糸が切れ、糸が足りないまま織り進むことで欠陥品が生じます。この欠陥は布織機を停止し、糸を元の状態に戻さない限り発生し続けるため、可能な限り早く欠陥を発見することが求められます。スポーツウェア等で多用される経編ニット(図4)は、特徴として蒸散作用等を狙った複雑な立体構造を持つことにあります。このことから、布地に厚い部分と薄い部分が存在し、欠陥発生時には、薄い部分が広がる場合と布に穴が開く場合の2パターンがあり、従来のレーザー照射等による自動検査技術は適用できませんでした。また、このことは無人操業化への妨げの一因ともなり、コスト削減における障害となっていることから、解決が急がれていました。
図4 経編ニット
研究チーム
・包 躍 東京都市大学 知識工学部情報科学科 教授
・小屋 裕太郎 東京都市大学 総合研究所 特別研究員
・中田 崇行 富山県立大学 工学部情報システム工学科 准教授
・荒木 貢 城西ニット有限会社 取締役社長
用語解説
※1経編ニット:ループをタテ方向に連続して編み上げていく編物。吸水性や速乾性、伸縮性などに優れ、他の繊維製品とは異なる独特の触感があるため、用途は幅広く、ユニフォーム、運動靴、水着、車のシートなど、ファッションからインテリア、医療、工業まで応用範囲は多岐にわたる。
※2フーリエ変換:任意の波形を、正弦波のような性質が良くわかっている波形の異なる周波数の成分に分解し、その大きさ(振幅)および位置(位相)を求める計算
※3正規分布:平均値の付近に集積するようなデータの分布を表した、連続的な変数に関する確率分布
【関連するリンク先】
~報道関係者からのお問い合わせ先~
東京都市大学 知識工学部 教授 包 躍(ばお ゆえ)
学校法人五島育英会(東京都市大学グループ)法人本部広報室
TEL:03-3464-6916